人生とお金(8)引退までのお金を設計する

「自分は死ぬまで働かない」と決めた場合、引退までと引退後のお金の設計をする必要があります。引退後に困ったり路頭に迷ったりしないように、引退までにいくらのお金を作るか、引退後にどのようにお金が入ってくる仕組みを作るか、ということが大切になります。

わかりやすく例を出してみましょう。今の年齢が50歳、死ぬ年齢(自分で勝手に決めたもの)が90歳、そして仕事は70歳くらいで辞めるかな。と決めたとします。

ご多分に漏れず私もですが、多くの人はそれほどこれまでにお金を貯めたりしてはいないのではないかと思います。子どもの教育費が相当かさんだり、住宅ローンがまだまだたくさん残っていて返済が大変だったり、いろいろな事情で十分なお金を貯めているという人は割と少ないと想像します。そこで、現在の手持ちを大胆に0円としてしまいます。50歳の貯金額の平均値や中央値はある程度あるはずですが、マイナスの人(借金状態)もいると仮定し、ゼロと保守的に見積もってみます。

そして、引退後に十分な年金が確保されていそうだ、と言う人もそれほど多くはないと想像します。もちろん、20歳そこそこからずっとしっかり、汗水たらして会社に貢献して働いてきたという人は、ある程度の年金額になっているでしょうからあまり心配はありませんが、いろいろな事情で年金がしっかり確保できていない、と言う人も多いでしょう。私も自営業者で国民年金だけを払っていた時期もありますので、充分生きていける年金が確保できているというわけではありません。

ただ、年金制度では、「老齢基礎年金」(国民年金の1階部分)がフルでもらえる加入期間40年に達していない場合は、60歳を超えても継続して加入して年金保険料を払う、という方法や、65歳からもらえる年金を70歳までもらわず、繰り下げて受給するといったやり方もあります。これ以降、年金額を増やすこともできるのです。諦めずに、死ぬまでもらえる年金を増やしていきましょう。

話を戻し、70歳からもらえる年金が例えば夫婦で月20万円(もう少しもらえる人も多いでしょうが)として、充分な暮らしをするために月30万円必要だと考えたとすると、月10万円足りません。70歳から90歳まで月10万円、総額は2,400万円足りない、ということになります。つまり、70歳までに2,400万円ないと困る、というわけです。まさに「2,000万円問題」に近い数字です。  この2,400万円を、何としても70歳までに仕事をしながら貯めていかなければいけません。子ども2人が55歳くらいで巣立つ(割と標準的なモデル化と思います)と考えると、55歳から本格的に蓄財して70歳までに2,400万円貯める、つまり年間160万円程度溜めていく必要がある、ということになるでしょう。実際には、後述する投資・運用によってそんなに貯めなくてもいい形にはなりますが、そのような計算をしておくかしないかで、その後のお金についての取り組み方が変わってきて、その後の幸福度も変わってくるでしょう。まずは、概算でいいので、そのような計算をしてみることが大切です。